【新潟医療福祉大学】高校ラグビー選手の発達過程と ポジション特性を解明!長期的な育成計画への応用に期待!
新潟医療福祉大学健康スポーツ学科の熊崎昌講師と藤本知臣講師らの研究グループは、高校ラグビー選手の体格および筋力、パフォーマンス指標の発達過程とポジションの特性を3年間の縦断研究によって明らかにしました。
高校ラグビー選手のポジション特性を考える上では除脂肪量を考慮した上肢および下肢筋力評価が重要であること、さらに、日本の高校ラグビー選手は世界トップランカーの国の同世代のラグビー選手よりも下肢筋力やスプリント能力が劣っていることが明らかとなり、ラグビー競技における長期的な育成計画への応用が期待されます。
なお、本研究成果はJSPS科研費JP17K13195の助成を受けて実施され、2023年7月27日に国際誌「International Journal of Sports Physiology and Performance」に公開されました。
研究成果のポイント
1. これまで報告がほとんどなかったアジア諸国の高校ラグビー選手における長期的な発達過程を明らかにした点。
2. 世界的にも用いられている筋力の指標である「体重に対する筋力」ではなく、ポジション間の体組成の違いを考慮した評価指標である「徐脂肪量に対する筋力」を用いた点。
3. ラグビー世界トップランクの強豪国の同世代ラグビー選手と比較して、日本の高校ラグビー選手は下肢筋力やスプリント能力の成長が小さいことを明らかにした点。
【研究概要】
ラグビー競技はタックルやスクラムなどのコンタクトがゲームを左右するため、体格(身長や体重、除脂肪量)が競技パフォーマンスに大きな影響を与えることが知られており、実際にラグビー世界ランキング上位国と下位国の選手の間には体格差が存在することが報告されています。アジアで唯一のラグビー強豪国といえる日本においても、世界ランキング上位国であるヨーロッパ・オセアニア諸国に比べて体格的に劣っていることから、日本ラグビーの発展に向けたジュニア世代の長期的な育成計画が重要です。
また、これまでの研究では、ラグビー選手のパフォーマンス指標としてベンチプレスやスクワットの最大挙上重量などの絶対値や体重で規格化して示したものが多く、ポジションによって大きく異なる体組成を考慮できていない可能性がありました。そこで本研究では、日本の高校ラグビー選手を対象として、高校3年間の体組成および筋力測定を実施し、体組成の違いを考慮した指標によって日本の高校ラグビー選手の発育発達過程やポジションによる特性を検証しました。
本研究では北信越地域に所属する高校ラグビー選手83名を対象に、高校入学から卒業までの3年間を通して定期的な体力測定を実施しました。
測定項目は、体格指標として身長、体重、脂肪量、除脂肪量を、筋力指標としてベンチプレスや握力、懸垂、等速性膝関節屈曲伸展筋力、50mスプリントタイム(10m、20mタイム)やアジリティテスト、ジャンプを測定しました。
その結果、体重や体脂肪量、除脂肪量の増加にはポジションによる差があることが明らかになりました。一方、上肢筋力について、これまで一般的に用いられてきた体重に対する相対値ではポジションによる差が見られましたが、除脂肪量に対する相対値ではポジションによる差が見られませんでした。さらに、下肢筋力やスプリント能力においては学年の推移による発達は見られず、この点はラグビー強豪国のジュニア選手の発育発達とは異なりました。
本研究から、日本の高校生ラグビー選手の発育過程を明らかにすることができ、ラグビー選手のパフォーマンス評価指標として除脂肪量との相対値を用いた筋力評価の重要性が示されました。さらに、日本のラグビー界を強化するための長期的なアスリート育成を考えていくうえで、体重のみならず除脂肪量を意識した体格の改善や、下肢筋力およびスプリント能力の強化が必要になる可能性が明らかになりました。
【論文情報】
Longitudinal Development of Physical Characteristics and Function in Japanese Junior Rugby Union Players
(日本の高校ラグビー選手における身体組成および身体機能の3年間の発達過程)
Akira Kumazaki*, Tomomi Fujimoto*, Yuiko Matsuura (*は共同筆頭著者)
International Journal of Sports Physiology and Performance,18(9),1038-1046
URL:
https://journals.humankinetics.com/view/journals/ijspp/18/9/article-p1038.xml?rskey=htxitN&result=1