【理学療法学科】研究論文がオープンアクセス雑誌 「Pain Research」 に掲載
太田大樹(理学療法学科助教)、大井理史(庄内余目病院リハビリテーションセンター、理学療法学科18期生)、田口徹(理学療法学科教授)らの研究論文が、2024年2月7日付でオープンアクセス雑誌 「Pain Research」 に掲載されました。
Tmem120A (別名TACAN) は近年、擦る・押す・引っ張るなどの機械刺激で生じる痛み(※機械痛覚過敏という)への関与が注目されている細胞膜貫通タンパク質分子の1つです。今回の研究では、Tmem120Aの遺伝子発現が、遅発性筋痛(いわゆる運動後の筋肉痛)および筋炎を発症した痛覚過敏モデルラットの筋で増大することをはじめて明らかにしました。
研究成果は罹患者の多い 「筋痛疾患」 の分子メカニズム解明や治療に繋がる可能性があり、今後の展開が期待されます。本研究は、中部大学生命健康科学部および日本大学歯学部との国内共同研究として行われました。
研究概要:
骨格筋の痛み(筋痛)は臨床場面だけでなく日常生活において高い頻度で発生します。主な特徴として、機械刺激 (つねる、押す等の刺激) で起こる痛覚過敏が挙げられますが、その発生メカニズムには不明な点が多く残されています。
今回の研究では、①炎症を伴わない筋痛(遅発性筋痛モデル)と、②炎症を伴う筋痛(筋炎モデル)の2種類の動物から筋を採取し、Tmem120Aとそのパラログ(側系遺伝子;遺伝子重複によって生じた機能・構造の異なる遺伝子)であるTmem120Bの遺伝子発現レベルを、リアルタイムPCR法にて測定しました。その結果、①の遅発性筋痛モデルではTmem120Aが、②の筋炎モデルではTmem120Aに加えてTmem120Bの遺伝子発現が増大することがわかりました(図)。筋痛におけるこれら遺伝子の詳細な関与の実証は今後の課題ですが、今回の研究成果はその手掛かりとして有用な知見だと考えられます。
研究者からのコメント:
近年、Tmem120A (TACAN) は機械痛覚や脂質代謝、免疫に関わる多機能分子として世界的に注目されています。今回の研究によりTmem120Aが筋の機械痛覚過敏に関わる可能性を示すことができましたが、その詳細な役割はまだ十分に解明されていません。今後は、この研究成果を理学療法やリハビリテーション領域でとりわけ重要な筋の機械痛覚過敏の治療に結びつけたいと考えています。
原論文情報:
Hiroki Ota, Rihito Oi, Kimiaki Katanosaka, Kazue Mizumura, Toru Taguchi. Expression profiles of Tmem120A/TACAN in rat skeletal muscle subjected to exercise and inflammation. Pain Research, 39(1): 35-39, 2024.
DOI:
https://doi.org/10.11154/pain.39.35
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